今回の記事はいつもより少し長いのと、一部内臓の写真があります。苦手な方はご注意を。
8歳になったディアナ。ずっと昔から胃捻転予防の手術はあまり高齢になる前にしようと考えていました。
車で15-40分圏内に技術的に信頼のおける病院が複数ある。わたしたちの住んでいる所は診てもらいたい症状によってそれが得意な病院を選べるという比較的恵まれた環境だと思います。
前回のちょっとしたひっかかりから(お誕生日と、獣医師いろいろ)、改めて胃捻転についてわたしが直接会話し聞いた複数の獣医師の見解を整理してみました。
獣医Aの意見
- 年齢とともに胃を吊り下げている靱帯が伸びて捻転しやすくなるため、あまり若年で胃固定予防をしても意味がない
- たいていは捻転してから救急で来て無事整復できた後、次が起こらないようについでに胃固定をする
獣医Bの意見
- 靱帯が伸びる云々は学会で聞いたことがない。高齢になれば胃の動きが弱くなり胃拡張が起こりやすくなる。胃捻転は胃拡張から起きるという意味では年齢は関係あると言える
- 予防で胃固定をするなら避妊手術で開腹した時についでにするのがスタンダード
- 開腹で胃を肋骨にひっかける方法と、腹腔鏡で胃の一部を腹膜と癒着させる方法が(自分は)できる
- ワイマラナーが好発種という報告はない
獣医Cの意見
- あまりに子どもの時だと胃が小さいから、手術はしにくいとは思う
- 開腹で肋骨にひっかける方法と、腹腔鏡では癒着させる方法と、先日学会で発表されたのは肋骨の間の筋肉に挟み込むという方法があるようだ。(自分が)できるのは開腹のみ
- (自分が飼っている)ドーベルマンは2頭とも捻転になった。高齢になるにつれやはりずっとビクビクして生活していたが、結局事前の予防術までは踏み切れなかった
- 胸のかたちからワイマラナーは好発種だと考える
獣医Dの意見
- 靱帯が伸びてくるというのは自分は聞いたことがないが、申し訳ないが獣医というのは概ね自分の経験則から飼い主さんに説明する。人間の医師のように明確に統一された治療指針がない
- (自分は)開腹と腹腔鏡の2種類ができるが腹腔鏡の術式として肋骨の間の筋肉に挟み込むというは知らない。
- 確かに、避妊手術の時にやっておいてもよかったとは思う
・・・できるだけ私情は入れずに会話したとおりを箇条書きにまとめてみたつもりなんですけどね。
どーよ、これ。飼い主混乱するわ。
4人の獣医師の意見を聞き、自分なりに以下のように結論づけました。
- メスなら避妊手術の開腹の際に同時に胃固定予防術もしておくのがベスト
- 開腹のついでがないなら身体への負担が少ない腹腔鏡がベター
- ワイマラナーは好発種である(これは譲らない)
腹腔鏡ができる病院は圏内に4つあるのだけれど、今後のことも考えて一番若手の先生がやられているところにお願いすることにしました。
手術は約2時間ほど。朝お預けして夕方お迎えです。健康な愛犬の身体にメスを入れるというのは勇気がいることだけれど、これもわたしの20年以上に亘る経験則から導き出した答えです。発症してしまえば死に至るまでが時間勝負・および緊急大手術なため高額&予後も要注意である胃捻転は、なんなら避妊手術より『これだけは』対策しておかなければならない。という思いでした。
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お迎え&先生から行った術式の説明を聞く
↑胃の一部と腹膜を5cmほど縫い合わせて癒着させる術式。一番自然につけられる場所をカメラを見ながら探しているところ。一番神経を使うシーン。(付けたときに胃がひっぱられるような場所を選んでしまうと癒着する前に取れやすいのだそうだ)
胃は、胃拡張を起こしやすいタイプの形だったとのこと。やはり今回はやっておいて良かったのかな・という感想です。と。
左)肝臓 | 右の白い部分)胆嚢
血液検査の数値には現れていなかったけれど、こうして見ると年齢を感じさせる肝臓。胆嚢にも少しどろっとした胆汁がたまっていたので、もし食生活で見直せるところがあればこれから気をつけて・とのこと。・・・若い犬たちにつられて肉系多すぎたかな・・。
それにしてもやはり開けてみないとわからないこともまだまだ多いのね。
とにかく手術はすべて無事に終わりました。お腹にはカメラを入れる穴と、それとは別で10cmほど切開した2箇所に縫合跡が。抜糸まではケアが必要だけれど本犬は順調に回復しています。
今後高齢になるとともに胃拡張になることはあっても、捻転する可能性が限りなく0になったのは飼い主の気分的にもとても助かる。これで天寿を全うするまで大きな手術はないといいのだけれど。
(写真は「写真撮らせて」と言うと疲れた表情をつくったディアナ。たぶん分かってやってる)
[全身麻酔のついでにやってもらった1.]
喉のあたりにあったダニのようなイボを除去。
「ついでにジュッって焼いてもらいたい」とお願いしたところ、「このタイプだったら切りますね」と。
ホルマリン浸けにしてもらってお持ち帰り。どこかに飾ろうか・・・。
[全身麻酔のついでにやってもらった2.]
歯のスケーリング。
日々の歯磨きではまかないきれない箇所もちらほらあったのでお願いしました。
歯周ポケットまできれいになったよ!
予防手術をしなくても捻転になることなく天寿を全うするワイマラナーもいます。
1歳くらいまでに発症する子は遺伝が関わってくるかもしれないけれど、高齢になってからの胃捻転の可能性は「うちの子に限って」と思わずに胸の深い犬なら誰にでも起こりえることだと思って欲しい。
今回の予防術の記事が、個々の飼い主さんが自分の力で考えるための材料として少しでもお役に立てますように。
こんばんは!
胃固定術についての記事、拝見いたしました。胃捻転について、胸の深い犬種は用心したほうがよいと聞いており、咳き込んだり、嘔吐したりするたびに、もしや!とビクビクしているのが現状です。今のところ、大事には至っていませんが、胃固定術も検討しようかと、考えさせられました。
WRC出身のアリエルも6歳を迎えました。いつまでも元気に!を合言葉に、健康でアリエルらしく過ごしてほしいと切に願います♡
あらー、コメントありがとうございます(^^
そっか、アリエルももう6歳に・・。大切にしていただいてありがとうございます。
日々幸せに暮らしている様子をみさせてもらって、本当に良いご家族に委ねられて良かったと、安心しております。
予防のためだけに健康な体にメスを入れるのって躊躇いますよね。胃捻転を目の当たりにしたり、留守番させてる間に胃捻転で死んじゃった、というような話を聞く度に決意を固めてきたのだけど、実際に病院に行くまではやはり時間がかかりました。
無事に終われば安心感しかないのだけれど。
アリエルもたくさん考えてみてください。結果、予防術までしなくてもいい、という結論に至ることはいいのだけれど、ワイマラナーオーナーとしては必ず一度は検討して欲しいと思って書きました。