君たちと、共にある

墓標

何から書けばいいのか、ぐるぐると頭の中で短文を並べてはうまくいかずに、日々の忙しさを言い訳に思考停止して。ここひと月ほどはそんなことを繰り返していました。
うーん、まだとりとめのない文章になるかもだけど、自分の中で風化しないうちに。


極小規模とは言えブリーダーをしている以上、「命」を肌で感じる場面に多く関わってゆくことになります。
それが自分の生み出した犬自身のことであったり、お譲りした子犬とそのご家族の人生だったり。光栄なほど嬉しいこともあれば、辛く、悲しい出来事も。

 

例えば実は、先日生まれたエピの子のうち1匹が、4日目の昼すぎに早くも天へ召されてしまいました。

母子ともに健康、皆元気に乳を吸えているのを確認してから人間も久しぶりに安堵の眠りについた翌朝。1匹だけ体重が40gも減ってた。130gで生まれて40g減るって、かなりヤバい。
慌てて3時間おきの人工哺乳に切り替えるも、ゆるやかに、確実に弱ってゆく。
4日目の朝。一縷の望みをかけて技術的に信頼できるかかりつけへ。
ーー分かっている。たぶん、もう天国に行きかけている。けれど最後に、できるだけのことはしてあげて欲しい。と院長に頼みました。

数時間後。院内で一番細い3mmのカテーテルが胃まで入らない。可能性のひとつとして、もともと器官が細かったのかもしれない・・と、院長から電話があり、そしてその約30分後再びかかってきた電話は、静かに息を引き取ったとの連絡でした。

きっと生まれた日にロクに乳にありつけなかったから器官が痩せ細ってしまったのだろう。
もし生まれた日の夜にもっと長く見守っていたら。
もし翌朝すぐにこの病院に連れてきていたら。今さら「もし、あの時」を考えても仕方のないことだし、こんなジメジメの文章を公開してどうするんだという思いもあるけれど、2ヶ月間。一生懸命お腹の中で育って、やっとこの世界の空気を吸った命。なかったことにしたくなくて書き残すことにしました。
一番上の写真の石の下に、その「おチビちゃん」が埋まっています。

一胎子登録申請用紙JKCの一胎子登録申請用紙には「出産頭数」「死亡頭数」「登録頭数」が普通に並んでいて、私が過去見聞きしてきた中でも「死産」や「理由がわからないけど数日で死んでしまった」という話は珍しくない。けれどやはり、私がもっと違う判断をしていたらどうにかできたのではないかと考え出して、辛いものですね。

他の4頭は日々すくすくと成長中です。ほ乳期のクセに4頭の大きさで母体が埋まるくらいに。
残された貴重なこの4つの命たちは必ず幸せにしなければ。

成長記録

カメラ
産室にはカメラを設置してスマホでいつでも見られるようにしています。最近のカメラはクリアだね。


下の写真は先月の大阪インターのようす。友人のカメラマンが素敵に撮ってくれた写真たちが届きました。

大阪インター

大阪インター

ドッグショーの表舞台。華やかな世界で犬たちと頑張って評価される。こういう話題は私のような文章力が乏しい人間でもネット上に載せやすいのだけどね。

「ブリーダーは心の弱い人には向かない」
これはよく言われることだし私も自身に言い聞かせるように言うことがあります。けれどそれは決して命に対して鈍感になっていいということではなく、人として正しい心でいること。そしてその心で瞬間瞬間に下した判断から逃げない強い心でいること。
そうすれば、一つの命が失われた時にも人として堂々と泣ける。オーナーさんから悲しい報告があった時も、一緒に悩む立場に立てる。
ずっと、「君たちと、共にある」と言える。今はそんな風に考えています。

snowy
IDEEや無印良品のポスターでも知られるcoricciさんから、亡きSnowyの絵が届きました。
亡き愛する犬たちに向かって、いつまでも胸をはれる犬飼いでいたい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です